印刷技術の進化と歴史|昔はどのような方法で大量に印刷していた?
2024.11.23印刷印刷は現代では当たり前に使われている技術ではありますが、かつてはさまざまな試行錯誤を経た技術になります。
そもそも、紀元前には複数枚印刷をする技術というものが確立されておらず、複数枚発行するためには多くの労力を要していました。
多くの人に見てもらいたいと考えていた人が世界各国にいたため、それぞれの国で印刷技術が確立されたのです。
本記事では、印刷技術の進化と歴史について、昔はどのような方法で大量に印刷していたのかを解説します。
紀元前
実は、印刷に関する技術は紀元前から確立されていたのです。
印刷の歴史は紀元前4000年ごろの古代バビロニアの押圧印刷が始まりだといわれています。
当時は紙が存在していなかったため、印刷をするものはパピルスという水草の茎を加工していました。
紙は英語で「Paper」と表記されますが、この単語はパピルスが語源となっています。
紙の発明
紙は紀元前200年の中国で発明されたといわれています。
当初はさまざまな方法で紙が作られていましたが、西暦100年ごろに蔡倫(さいりん)という役人が製紙法を改良しました。
蔡倫が使用した材料は麻のボロ切れや樹皮などであり、水中でバラバラにした植物の繊維を薄く平らに伸ばしたのです。
なお、先述したパピルスの茎はそのまま並べて作ったものであるため、厳密には紙とはいえません。
木版印刷
木版印刷は文字や絵などを1枚の木に刷り込んで作った版を、紙に落とし込む印刷方法です。
これまでは複数枚作成するのに同じ内容を書き込んでいたため、多くの時間や労力が発生していました。
小学校の図画工作の授業に行われる版画と同じであり、インクを使用することによって短時間で大量に発行できるようになったのです。
木版印刷も中国で確立された技術といわれており、最古の印刷物は紀元前200年ごろのものになります。
ヨーロッパでの印刷
これまでは主に中国における印刷の歴史をご説明しましたが、ヨーロッパでも大量に印刷をする技術が確立されていました。
具体的な記録は残されていませんが、1400年代には活版印刷を考案したという説が有力です。
活版印刷とは、活字を組み合わせて作った「活版」を用いる印刷方法であり、ハンコやスタンプのような印刷方法になります。
先述した木版印刷も活版印刷に含まれる技術であり、ルネサンスや宗教改革、啓蒙時代などに影響を与えました。
木版と銅版
紀元前の中国では木版が用いられていましたが、ヨーロッパでは木版だけではなく銅版も用いられていました。
木よりも硬い銅が使われていたということは、ヨーロッパでは銅の加工に関する技術も確立されていたということになります。
はじめて活版印刷で発行された印刷物は聖書といわれており、主に宗教活動に用いられていたと考えられます。
また、木版は彫り間違えてしまうと別の木版を用意しなければなりませんが、銅版は溶かすことで再度彫れるメリットがあります。
オフセット印刷の始まり
これまでは木版や銅版を使用して、スタンプのように発行する活版印刷が一般的でした。
オフセット印刷は1796年にヨーロッパで発明され、1853年にはイギリスで特許を取得しました。
オフセット印刷は水と油の反発を利用した印刷技術である、石版印刷がルーツといわれています。
1904年にはアメリカで紙へのオフセット印刷が開発されており、日本では1900年代に持ち込まれた技術になります。
近代の印刷
現代でも印刷物によっては活版印刷やオフセット印刷が採用されていますが、大量に必要な場合は追いつかないことがあります。
こちらでは、現代で用いられている印刷方法をご紹介します。
オンデマンド印刷
オンデマンド印刷とは、版を使わずに印刷する手法であり、データ入稿後すぐに印刷を行うことができます。
電子写真方式やインクジェット方式などを利用した、高速で印刷が可能なデジタル印刷機を使用した印刷方法です。
一般的にはレーザープリントがメインで使われており、レーザーによる静電気でトナーを定着させて印刷します。
短納期で柔軟な対応ができる印刷方法であり、少部数・少量の印刷に適した印刷方法になります。
オフセット印刷
オフセット印刷は版を使用した印刷方法であり、先述した活版印刷の進化系ともいえる技術です。
「付けて離す」という意味を持つオフセットは、紙に版を付けて離すことが由来となります。
オフセット印刷では「CMYK」と呼ばれる、下記のような色が使われており、複数の版を用いて印刷します。
- C:Cyan シアン
- M:Magenta マゼンタ
- Y:Yellow イエロー
- K:Key plateブラック
オフセット印刷は大部数・大量に印刷できる技術ですが、オンデマンド印刷と比較すると納品までに時間を要します。
プレス印刷
プレス印刷は印刷工程で作成した版を印刷機に押し付け、絵柄部分にインクを付けて転写する技術です。
かつてのプレス印刷はワインを製造する際などに用いられるぶどう絞り機をヒントにして作られたといわれています。
現代では専用のプレス機を用いており、蒸気や電気による動力が用いられるようになりました。
印刷以前の高低をプリプレス、印刷の工程をプレスといい、それぞれで作業が分担されている点が特徴です。
グラビア印刷
グラビア印刷は微細な濃淡を表現できる、写真画像などに用いられる凹版印刷のひとつです。
凹版印刷は複製したい部分を削り、くぼんだ部分にインクを付ける印刷方法を指します。
インクに厚みを持たせることができるため、高品質なカラー印刷が可能となります。
そのため、現代ではプラスチックフィルムや金属箔といった、紙以外の印刷にも用いられています。
おわりに
本記事では、印刷技術の進化や歴史について解説しました。
印刷の歴史は紀元前4000年ごろの古代バビロニアの押圧印刷が始まりだといわれています。
その後、木版印刷や活版印刷といった技術が確立され、さまざまな印刷物を大量に発行できるようになりました。
現代ではオンデマンド印刷やオフセット印刷、プレス印刷、グラビア印刷といった方法が採用されています。
大量の印刷物を発行するために、長い歴史で培われた技術が採用・応用されているのです。
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