上下に開く「天綴じ」を使用する冊子や、データを作成する際の注意点を解説

2023.02.05冊子印刷

天綴じの冊子

一般的なテキストやパンフレットといった冊子は、左右にページを開くことができるものを目にすることが多いと思います。

しかし、なかには上下に開く「天綴じ」と呼ばれる綴じ方で製本された冊子もあります。

本記事では、上下に開く「天綴じ」を使用する冊子や、データを作成する際の注意点を解説します。

 

天綴じ(上綴じ)とは?

天綴じ(上綴じ)とは

天綴じ(上綴じ)とは、冊子の上部を綴じ、ページを上に開いて内容を見ることができる綴じ方です。

「天」とは印刷業界では上を指す言葉で、下を指す言葉は「地」と呼びます。

左綴じや右綴じと同様に、下記のような綴じ方が可能です。

 

無線綴じ

本文の背の部分を糊や接着剤で固め、表紙で包む綴じ方です。

針金などを使わず、硬い表紙を使用すれば高級感を出すことができますが、ページ数が少ない場合は背表紙を作ることができないため、綴じられない点には注意が必要です。

また、ノド(本文を見開きの状態にしたときに綴じている部分)を開ききることができないため、中央部分のデザインにも注意しましょう。

 

中綴じ

中綴じは表紙と本文を開いた状態で、折り目部分を針金で綴じる方法です。

無線綴じとは異なり、中綴じ冊子はページを開ききることができるため、ノドの部分に印刷をしても目視がしやすい点が特徴です。

一方、綴じた際に中央のページと表紙の先端がずれてしまうため、カットして整える場合は小口(ページの端)に余白を設ける必要があります。

 

平綴じ

平綴じとは、表紙や本文をまとめてホチキスで留める綴じ方で、背から5mm程度の箇所を留めます。

ホチキスで留めるだけで製本ができるため、印刷業者だけではなく学校やオフィスでも使われる綴じ方です。

無線綴じのようにノドを開ききることができない、ページ数が増えると針の長さによっては止められない、強度が落ちてしまう点には注意が必要です。

 

天綴じがよく使われる冊子の種類

天綴じがよく使われる冊子の種類

こちらでは、天綴じがよく使われる冊子の種類をご紹介します。

 

カレンダー

カレンダーは月日をカウントするために使われる冊子のことで、月ごとに印刷されたものや日ごとに分けられたものなどがあります。

カレンダーの発祥は紀元前の古代エジプトだと言われており、ナイル川の水位を計測したことが始まりという説があります。

これは「ユリウス暦」と呼ばれるものですが、正確性に欠ける部分もあったため、1500年代後半にローマ教皇であるグレゴリオによって「グレゴリオ暦」が確立されました。

このグレゴリオ暦は現在のカレンダーにも使われているもので、日本には1873年から施行されました。

 

プレゼン資料・企画書

天綴じ冊子はプレゼン資料や企画書といった、ビジネスシーンで使用する冊子にも使われます。

数値や文字などが記載され、お客様や社員に説明するには、天綴じ冊子が扱いやすいことから、多くの人や企業に採用されています。

なお、天綴じ冊子もほかの冊子と同様に、表表紙と裏表紙以外の本文にのみページが割り振られます。

 

伝票、領収書

店舗やビジネスシーンなどで使われる伝票や領収書も、天綴じで製本されます。

しかし、伝票はほかの冊子とは異なり、1枚ずつちぎってお客様にお渡しする必要があるため、下記のような綴じ方が用いられます。

 

針金を使用した天綴じ

伝票の上を針金で綴じます。

なお、伝票本体はホチキスで留めず、ちぎりやすいようにミシン目加工が施されたラインの上あたりを留めます。

 

天糊

天側を糊で留める綴じ方です。

強度が高い糊を使用すると伝票をちぎることができなくなるため、適度な強度を持った糊が使われます。

 

天巻き糊

先述した天糊で製本された伝票に表紙を取り付ける製本方法です。

無線綴じと同じような綴じ方ですが、伝票をちぎることができるような、最適な強度の糊が使われます。

 

天綴じ冊子の入稿データの作り方

天綴じ冊子の入稿データの作り方

下記、天綴じ冊子の入稿データの作成方法です。

 

縦長、横長を選ぶ

作成する天綴じ冊子を縦長にするのか、横長にするのかを決めましょう。

縦長の天綴じ冊子にはプレゼン資料が使われる傾向にあり、横長の天綴じ冊子には伝票がよく使われます。

カレンダーについては形状や形式によって縦長、横長さまざまな綴じ方で製本されます。

 

綴じ方を選ぶ

先述の通り、天綴じには針金を使用したものや天糊、天巻き糊といったさまざまな綴じ方があります。

それぞれ、ノドを開ききることができたり、伝票や日めくりカレンダーのようにちぎって使ったりするものなどさまざまです。

そのため、用途やデザインなどによって綴じ方を選びましょう。

 

データを回転させる

印刷業者によっては、天綴じ製本に対応することができない場合があります。

そのような場合、作成したデータを回転させる必要があります。

横型サイズで注文する場合、印刷データの天を決めてから、天が左になるように90度回転させます。

 

表紙と裏表紙の指示を行う

天巻き糊のように、表紙を使用する製本方法で印刷を依頼する際、表表紙と裏表紙の指示を行いましょう。

冊子を見開きで開いたときは、各ページを同じ方向にします。

一方、冊子を見開きで使わず、ノドを天にして使う場合は各ページの天を合わせて印刷します。

 

印刷を依頼し、サンプルをもらう

業者に印刷を依頼し、可能ならサンプルを送ってもらいましょう。

サンプルの確認時にはにじみや誤字・脱字だけではなく、伝票や日めくりカレンダーなどちぎって使用するものはちぎりやすさなどを確認します。

問題ないようでしたら、依頼数の印刷物を印刷してもらいましょう。

 

資料別に見る、天綴じ冊子の製本方法

資料別天綴じ冊子の製本方法

こちらでは、天綴じ冊子の製本方法を資料別にご紹介します。

 

カレンダー

先述の通り、カレンダーには月ごと、日ごとにデザインが異なります。

月ごとで作成する場合は、Excelなどの表計算ツールを使用し、下記の手順で作成します。

 

セルに「年」「月」「曜日」を記載する

表計算ツールを使用し、下記のように年月と曜日を記載します。

2023 1          

曜日については日曜始まりや月曜始まりといった書式があるため、何曜日から始めるのかを決めておきましょう。

 

1日を記載する

始まりの曜日が決まったあとは、下記のように対象のセルに1日を記載します。

2023年 1月
1

しかし、日程を1日ずつ手作業で入力すると、多くの時間を要したり、ミスが発生したりします。

そこで、下記のような数式を使うことで、入力作業を効率化することができます。

 

  • DATE関数

DATE関数とは、日付のシリアル値を求める関数です。

また、シリアル値とは日付や時刻などを、特定の時点からカウントした数値を表します。

たとえば、2023年1月1日の場合、シリアル値は44,927となります。

こちらは1900年1月1日を開始時点としてカウントしたもので、2023年1月1日から44,927日後であることを示しています。

DATE関数は、下記の数式で求めることができます。

 

DATE(年,月,日)

年・月・日は手入力でも問題ありませんが、セルを指定することもできるため、手入力の効率を改善することができます。

 

  • WEEKDAY関数

WEEKDAY関数は日付に対する曜日を返す関数です。

Excelにおける初期の設定では、戻り値は 1 (日曜) から 7 (土曜) までの範囲の整数となっています。

WEEKDAY関数は、下記の数式を使用します。

 

WEEKDAY(シリアル値,週の基準)

こちらのシリアル値に先述したDATE関数を使用することで、入力作業が容易になります。

週の基準とは、戻り値の種類を指定するものであり、下記のように割り振られます。

週の基準 戻り値
1or省略 1 (日曜) ~ 7 (土曜) の範囲の整数
2 1 (月曜) ~ 7 (日曜) の範囲の整数
3 0 (月曜) ~ 6 (日曜) の範囲の整数
11 1 (月曜) ~ 7 (日曜) の範囲の整数
12 1 (火曜) ~ 7 (月曜) の範囲の整数

2日以降は1日が記載されたセルに+1に入力すれば表計算ツールが自動で計算してくれます。

2023年 1月
1 2 3 4 5 6 7

 

年月を非表示にする

最後に、年月が記載された行を非表示にします。

削除してしまうと数式が崩れてしまうため、必ず非表示にしましょう。

1 2 3 4 5 6 7

 

プレゼン資料・企画書

プレゼン資料や企画書は、会社の収益を左右する重要な書類です。

そのため、下記の手順で分かりやすい資料を作成しましょう。

 

目的を明確化する

プレゼン資料や企画書を作成する際、どのような内容を伝えるのかといった目的を明確化することが重要です。

「新商品を購入してもらう」「新事業を立ち上げる」といった、さまざまな目的があると思いますが、資料を作成していくうちに徐々に方向性がズレていくことがあります。

方向性がズレると資料の内容が伝わらなくなるため、必ず資料作成の目的を明確にしておきましょう。

 

最小限の文章を入力する

より理解してもらいやすい資料を作成しようとして、多くの文章を使ってしまいがちです。

理解してもらうためには文章を読んでもらう必要がありますが、長文を理解してもらうためには多くの時間を要してしまいます。

短時間で簡潔に理解してもらうためには、表やグラフ、画像といった視覚的な情報を記載し、文章は補助のような目的で使用することをおすすめします。

 

フォントやデザインにこだわる

資料作成時に文章を入力する際、さまざまなフォントがあるため、どのフォントが良いのかが分からない方もいらっしゃることでしょう。

誰でも読みやすい資料にするためには、「メイリオ」と呼ばれるフォントがおすすめです。

メイリオは可読性重視で作られたフォントであり、太字にした際はしっかりと太くなってくれます。

そのため、文章の強弱をつけるのに最適であると言えます。

また、プレゼン資料は記載情報に集中してもらうため、極力シンプルなデザインで構成することをおすすめします。

 

おわりに

本記事では、天綴じを使用する冊子や、データを作成する際の注意点を解説しました。

天綴じ冊子は上に開くように製本される冊子で、カレンダーやプレゼン資料・企画書、伝票・領収書が含まれます。

入稿する際は縦長・横長といった綴じる方向や、綴じ方などを選び、思い通りの冊子を印刷してもらいましょう。

 

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タグ : 印刷 天綴じ 綴じ
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