ネット印刷時に知っておきたいPDF入稿のメリットと注意点をご紹介

2022.11.30ネット印刷・デザイン

PDF入稿

ネット印刷のサービスを利用する場合、「PDF入稿」という言葉を耳にすることがあるかもしれません。

こちらの「PDF入稿」とは一体どのような入稿方法なのでしょうか?

今回はPDF入稿の入稿方法と、ネット印刷時に知っておきたいPDF入稿のメリットについてご紹介していきます。

 

入稿時に使われるファイル形式

入稿の方法

チラシ・名刺・パンフレットといった印刷物を作る場合、その原稿データを印刷会社に渡して印刷を進めることになりますが、この流れのことを「入稿」と言います。

現在では、パソコンで作成したデータを入稿する「データ入稿」が主流となっています。

また、データ入稿にはさまざまな種類があり、Illustratorを使ったai形式や、Photoshopを使ったpsd形式のものをそのまま直接入稿する「ネイティブデータ入稿」。

そのネイティブなデザインデータを印刷用PDF形式に変換したうえで入稿する「PDF入稿」があります。

下記、PDF形式を含め、それぞれのファイル形式について解説します。

 

PDF形式

PDF形式とは、「Portable Document Format」の略で、データを紙面に印刷する際の状態を参照することができるデータです。

PDF形式のデータはExcelやWordのように専用のソフトが無くても参照することができるため、どのような端末やOSでも共有、閲覧が可能です。

詳しいメリットや注意点については後述します。

 

ai形式

ai形式とは、アメリカのカリフォルニア州に本社を置くAdobe(アドビ)株式会社が制作、販売しているソフトである「Illustrator」のファイル形式です。

Illustratorは「ベクター形式」と呼ばれる、解像度が高いデータ形式で作成、保存するため、データや印刷物がぼやけにくい点が特徴です。

同じ画像データを取り扱う「JPEG」「PNG」といったファイルでは「ラスタ形式」と呼ばれる、低解像度の画像が使われます。

2000年に導入されたai形式のファイルは、イラスト制作やネット印刷業者に入稿するデータとして、多くの人に利用されています。

下記、ai形式を使用するメリットと注意点です。

メリット

ai形式のデータのメリットとして、高い解像度で閲覧、編集することができるほかにも再編集が可能な点が挙げられます。

本記事でご紹介するPDF形式は作成後に細やかな編集はできませんが、ai形式のデータは高解像度かつ細やかな編集が可能といった点で、高い柔軟性を持ちます。

また、ai形式のデータは開発元が同じAdobe株式会社であるPDF形式や、後述するpsd形式と連携性が優れているため、状況に応じて使い分けることができます。

注意点

ai形式のデータは編集ができる一方、第三者にデータを改変される可能性があります。

そのため、印刷業者に送付する際は、事前に元データのバックアップを取っておくことをおすすめします。

また、Illustratorによっては「オーバープリント」が設定されている場合があります。

オーバープリントとは色を重ねて印刷することで、下にある色が上にある色に消されてしまう現象はオーバープリントによる場合があります。

オーバープリントが設定されている場合、下記の手順で解除することができます。

  1. メニューバーにある「ウィンドウ」から「属性」を選択
  2. 「塗りにオーバープリント」、「線にオーバープリント」のチェックボックスを外す

 

psd形式

psd形式とは、先述したIllustratorと同様にAdobe株式会社が制作、販売しているソフトである「Photoshop」のファイル形式です。

PhotoshopはWebサイトのデザイン制作や、撮影した写真の補正などに使われるソフトで、デザイナーやデザイン会社などに採用されています。

メリット

psd形式のメリットは先述したai形式と同様に再編集が可能な点や、Adobe製品との連携のほか、画像の劣化を防ぐことができるといった点が挙げられます。

JPEG形式などの画像は上書きや編集を繰り返すと画像が徐々に荒くなり、劣化してしまう可能性があります。

しかしpsd形式の場合は、下記のように画像に関するさまざまな情報が保存されており、部分的に再編集を行うことができるため、高い品質のまま画像を編集・保存することができます。

  • パス
  • シェイプ
  • レイヤー
  • マスク
  • テキスト
  • 描画モード
  • 調整レイヤー
  • スマートオブジェクト

注意点

psd形式の注意点として、ファイルの大きさが挙げられます。

先述の通り、psd形式のデータにはさまざまな情報が保存されており、それらを編集することでデータ内の情報が積み重ねられます。

イラストやデザインを製作する際、書き込みや色付けといった多くの作業を行い、それに伴って多くのデータを使います。

そのため、psdデータを送付する際、時間がかかってしまったり圧縮して送付したりする必要がある点には注意が必要です。

 

JPEG形式

JPEG形式

JPEG形式とは静止画像のデータ形式のひとつであり、「Joint Photographic Experts Group」の頭文字をとったものです。

構成色は約1,677万色で、WindowsやMacといったさまざまなOSで導入されている形式のひとつです。

こちらでは、JPEG形式のデータに関するメリットと注意点をご紹介します。

メリット

JPEG形式のメリットとして、画像データの表現が十分にできる点が挙げられます。

先述の通り、JPEG形式は約1,677万色で構成されているため、鮮明な画像を表現することができます。

また、JPEG形式のデータはファイルサイズが大きい画像でも、見た目を変えずに圧縮することができます。

そのため、画像を多用するWebサイトなどでも読み込み時間を短くするといったことができます。

注意点

JPEG形式のデータを使用する際に気を付けたいのが、加工前後で画像が劣化する可能性がある点です。

JPEG形式のデータは画像を8×8のドット単位で区切って色を付けますが、圧縮しすぎると色が均一化されてしまうため、画像がモザイク状となり、データ全体が粗くなってしまいます。

このような現象を「画像の劣化」と呼び、JPEG形式で発生しやすいため、編集や書き換えを多く行う場合は注意が必要です。

 

PNG形式

PNG形式とは「Portable Network Graphics」の頭文字を取ったファイル形式で、先述したJPEG形式と同様に多くの方に使用されている画像のファイル形式です。

PNG形式には8bitと24bitの2種類があり、8bitは256色で構成され、24bitはJPEG形式と同様に約1,677万色で構成されるだけではなく、透過性を持たせることができます。

メリット

PNG形式のデータの特徴として、圧縮したものを復元することができる点が挙げられます。

大量にPNG形式のデータを送付する際、圧縮してから送付することにより、データを受け取った方は圧縮を元に戻して正しい情報を参照することができます。

なお、JPEG形式のデータは一度圧縮すると元に戻すことができない非可逆圧縮のファイル形式です。

注意点

PNG形式を取り扱う際の注意点として、「ファイルサイズが大きくなる傾向にある」「古いブラウザで表示されないことがある」といったことが挙げられます。

JPEG形式と比べて、PNG形式は多くの情報を持つため、ファイルのサイズが大きくなる傾向にあります。

そのため、データを読み込む際、サーバへの負担が大きくなり、反応速度や表示速度に遅れが生じる可能性がある点には注意が必要です。

また、PNG形式は1996年から利用が始まったため、それ以前のブラウザを使用している場合、表示されないことがあります。

 

【ネット印刷】PDF入稿のメリット

PDF入稿のメリット

PDFには「データ入稿」と「ネイティブ入稿」の2種類の入稿方法があることが分かりましたが、こちらでは後者の「PDF入稿」のメリットについてご紹介します。

 

データの容量を軽くできる

ai形式やpsd形式といったようなネイティブデータを直接入稿してしまうと、各ソフト内にはさまざまなレイアウト情報が含まれているので、どうしてもデータの容量が重くなってしまいます。

この形式をPDFに変えることで不要な情報が取り除かれ、シンプルなデジタルデータとなり、データの容量を軽くすることができるのです。

 

ソフトの互換性を心配する必要がない

入稿データで使ったソフトが発注した印刷会社で使用されていない場合、印刷会社でデータの詳細な確認を行ったり、出力したりといったことができません。

しかしPDF形式の場合、使用ソフトを選ぶことなく、異なる環境であっても同一のレイアウトで確認することが可能で、相互性を心配する必要もありません。

ただ、PDF形式にもさまざまな細かい設定があるため、デザインデータを入稿する際には印刷用に特化している設定でPDF作成を行ってください。

 

レイアウトが崩れることが無い

PDF入稿での最大なメリットであるとも言えるのが、作成時のレイアウトが崩れないということです。

先述でも触れましたが、デザインデータを作成したパソコンと印刷会社のパソコンでは、ソフトバージョン・OS・フォントの種類・解像度などの環境が異なるため、たとえ同じソフトを使っていても思わぬトラブルが起こってしまうことがあります。

しかしPDF形式であれば、こういったトラブルを未然に防ぐことができます。

 

フォントの互換性を心配する必要がほとんど無い

上記でも少し説明いたしましたが、印刷会社が入稿用のデータに使われているフォントをインストールしていなかった場合、別の種類のフォントに置き換えられてしまいます。

出来上がったものを確認してみると、「入稿時にイメージしていたものと大きく印象が変わってしまっている…」ということにもなり兼ねません。

PDF入稿の場合は、フォントを埋め込みできる機能があるため、印刷会社が指定のフォントをインストールしていない場合でも心配はいりません。

フォントをすべて埋め込んだ状態のデータにして入稿するようにしましょう。

 

【ネット印刷】PDF入稿の注意点

【ネット印刷】PDF入稿の注意点

こちらでは、PDFで入稿する際の注意点をご紹介します。

 

修正時に手間がかかる

PDF形式のデータは直接修正することができないため、印刷業者ではお客様から入稿されたデータを変更できません。

そのため、修正が必要な場合はお客様がPDF化する前のデータを修正する必要があるため、修正時に手間がかかります。

PDFデータの修正に手間をかけないためにも、印刷業者へ入稿する前には複数人で見直し、確認を行いましょう。

 

変換時にデータが置き換えられることがある

PhotoshopやIllustratorなどのデータをPDF形式に変換する際、設定によってはデータが置き換えられることがあります。

たとえば、先述したフォントのなかには一部PDFでは使えないものも含まれているため、違うフォントに自動で置き換えられてしまうといったことが挙げられます。

そのため、印刷業者へデータを入稿する前に使用可能なフォントが使われているのか、使用しているフォントをアウトライン化ができているのかといったことを確認しておきましょう。

 

カラー設定を見直す

一般的にパソコンやスマートフォンで表示されるデータは、レッド・グリーン・ブルーの3色で構成される「RGB」が採用されています。

しかし、紙面に印刷する際、プリンタではシアン・マゼンタ・イエロー・キープレートの4色で構成される「CMYK」で出力されます。

CMYKはRGBよりも表現することができる色が少なく、モニター上で鮮やかに見える色は印刷すると少しくすんだ色になることがあります。

こちらはPDFの設定を変更することで、色の違いを無くすことができます。

  1. 右側のメニューから「その他のツール」→「印刷工程」を選択
  2. 出力プレビューを選択
  3. 「表示」欄のタブにある「デバイスCMYKではない」を選択
  4. 「シミュレート」→「オーバープリントをシミュレート」にチェックを入れる
  5. 見た目を確認する

下記、CMYKで表現できない色の一覧です。

  • メタリックカラー
  • ネオンカラー
  • パステルカラー

 

PDF形式の便利機能

PDF形式の便利機能

PDF形式のデータには、下記のようにさまざまな便利機能があります。

 

注釈を入れることができる

PDFデータでは、下記の手順で注釈を入れることができます。

  1. 右側のメニューから「注釈マーク」を選択し、ツールバーの「ノート注釈」や「ハイライト」を選ぶ
  2. 注釈を入れたい箇所を選択する
  3. コメントを入力する

また、指定した箇所をハイライトしてコメントしたり、手書きのような感覚で対象箇所を指定したりすることができる「描画ツール」といった機能もあります。

 

1つのデータを共有し、レビューを記載することができる

PDFデータはクラウドストレージを利用することで、複数人で共有レビューが可能です。

こちらを利用することで、修正箇所の確認や質問などを効率良く行うことができます。

下記、データを共有してからレビューを記載するまでの手順です。

  1. 右上にある人物アイコンを選ぶ
  2. 共有したい相手のメールアドレスとメッセージを入力
  3. 「注釈を許可」を有効にする
  4. 取得したリンクを相手に送付する

これらを活用して、印刷業者にスムーズに作業をしてもらいましょう。

 

トンボを追加することができる

トンボを追加することができる

トンボはトリムマークとも呼ばれ、印刷物を裁断する位置や、インクの刷り位置を合わせるために使われます。

一般的にはPhotoshopやIllustratorなどでデータを作成する際にトンボを付けますが、下記の手順によりPDFデータでもトンボを追加することができます。

  1. 画面上部のツールをクリック
  2. 「保護と標準化」セクションから「印刷工程」を選択し、「トンボを追加」を選択
  3. 「トンボ」のなかにある、「すべてのマーク」にチェックするか、必要な項目のみチェックを入れる
  4. 必要に応じてスタイルや線幅を選択

 

おわりに

今回はPDF入稿の入稿方法と、ネット印刷時に知っておきたいPDF入稿のメリットについてご紹介しました。

PDFは編集が難しいデータですが、注釈を入れることができる、1つのデータを共有してレビューを記載することができる、トンボを追加することができるといったことが可能です。

「ネイティブデータ入稿」は、Illustratorを使ったai形式、Photoshopを使ったpsd形式のデザインデータをそのまま入稿することを言います。

その一方、「PDF入稿」とは、そのネイティブデザインデータを印刷に特化したPDF形式に変換したうえで入稿することを言います。

PDF入稿では、ソフトやフォントの相互性を心配する必要が無いほか、データの容量を軽くすることができるというメリットがあります。

一方、PDFデータは修正時に手間がかかる、変換時にデータが置き換えられることがある、カラー設定も見直す必要がある点には注意が必要です。

ネット印刷時にはPDF入稿のメリットを知ったうえで、PDFデータに変換するようにしましょう。

 

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タグ : PDF ネット 印刷
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