冊子の作り方|押さえておくべき基本や綴じ方の種類などをご紹介
2022.11.01|⟳ 2025.07.25|冊子1枚1枚の紙をまとめて製本するには、ステープラーを使ったり接着剤を使ったりといったように、さまざまな方法があります。
それぞれの綴じ方にはどのような特徴があり、製本する本の種類によってどのように綴じ方を選べば良いのでしょうか。
本記事では、さまざまな本の綴じ方や特徴をご紹介します。
冊子作りの基本と設計ポイント
冊子をスムーズに制作するためには、事前の目的設定やページ構成、サイズ・用紙の選定が欠かせません。
以下では、初めてでも失敗しにくい設計の基本をわかりやすく紹介します。
冊子の目的を明確にする
冊子を作る際は、最初に「何のために作るのか」を明確にすることが重要です。
たとえば、企業案内や会社概要なら信頼感や整然とした印象が求められます。
一方で、趣味の記録や同人誌であれば、自由なデザインや独自性が重視されるでしょう。
目的が異なれば、使用する言葉遣いや写真の選び方、配色などにも違いが生まれます。
ターゲットとなる読者の属性や用途に応じた構成を意識することで、伝えたい内容がより明確になります。
目的に沿った冊子設計は、情報の過不足を防ぐうえでも有効です。
まずは「誰に」「何を」届けたいかを明文化し、それに合ったトーンと構成を設計しましょう。
ページ構成と綴じを見据えた設計
冊子は一般的に「4の倍数」のページ数で構成されます。
これは、印刷と綴じの工程で用紙を半分に折り重ねる構造に起因しています。
そのため、ページ数を決める際は、見開きの流れや綴じ方向(タテ書き・ヨコ書き)もあわせて検討しましょう。
基本的な構成としては、表紙、裏表紙、目次、本文、奥付などが含まれます。
中綴じであれば見開きで読まれることを前提とし、左ページと右ページが連動するようなデザインが効果的です。
また、追加や差し替えが難しい無線綴じでは、最初にページ順や台割をしっかり設計することが求められます。
綴じ方に応じて構成を工夫することで、読みやすく伝わりやすい冊子に仕上げることができます。
サイズ・用紙選びの考え方
冊子のサイズは、用途や保管性、デザイン性に大きな影響を与えます。
一般的によく使われるのは「A4」や「B5」で、ビジネス用途にはA4が、読み物やパンフレットにはB5が適しています。
A5やB6などの小型サイズは、手軽に配布したい冊子や携帯性を重視する冊子に向いています。
用紙の種類は「上質紙」「マット紙」「コート紙」などがあり、それぞれ風合いや発色性が異なります。
たとえば、写真を多く使う場合は光沢感のあるコート紙が適しており、文字中心の冊子ではマット紙や上質紙が好まれる傾向にあります。
また、紙の厚さも冊子の印象に影響します。
本文には薄めの用紙(70~110kg)、表紙には厚めの用紙(135kg以上)を選ぶのが一般的です。
冊子の完成イメージに合わせて、適切なサイズと用紙を選定しましょう。
効果検証を行う
冊子は制作して終わりではなく、配布後の効果検証を行うことで、次回以降の改善につながります。
たとえば、QRコードの読み取り数や問い合わせ件数、配布後の反応率など、具体的な指標を用いて効果を測定しましょう。
社内でアンケートを実施したり、営業現場の声を集めたりすることで、デザインや構成、綴じ方の適否について客観的な評価が得られます。
これらの結果をもとにPDCAサイクルを回せば、冊子の品質や成果を継続的に向上させることができます。
とくに継続的に発行する冊子では、都度検証と改善を繰り返すことが、成果を最大化する重要な取り組みとなります。
冊子における成果のなかには、問い合わせや商品・サービスの購入などさまざまです。
WebへのアクセスにつなげるためにQRコードを設置するなどで、成果を計測しやすくなります。
QRコードについてはぼやけておらず、一定以上のサイズで、読み取りやすいようにしておくことが重要です。
綴じ方の種類と使い分け
綴じ方にはさまざまな種類がありますが、大別するとステープラーを使うものと、使わないものがあります。
以下にて、それぞれの綴じ方の特徴について解説します。
ステープラーを使う綴じ方
ステープラーを使う綴じ方は、下記の「中綴じ」「平綴じ」「アイレット綴じ」が挙げられます。
中綴じ
中綴じは表紙と本文すべてのページを開いた状態で重ねてから二つ折りにし、折り目部分をステープラーの針で止める製本方法です。
ページの中央部分である「ノド」を大きく開くことができるため、見開きなどページ全体に文字やイラストを印刷しても見やすいといった特徴があります。
製本する際にはページ数が4の倍数になるように製本する必要がありますが、ページ数が増えると本の内側にあるページがはみ出てしまうため、小口部分を整えるためにはみ出た部分を裁断する必要があります。
下記、中綴じについて詳しく説明しているページです。
参考ページ:中綴じ冊子印刷とは?無線綴じとの違いや製本方法、用途をご紹介
平綴じ
平綴じは表紙と本文すべてのページを重ねてから2つ折りにしたあと、本の背から5mm程度の箇所をステープラーや糸で綴じる方法です。
先述した中綴じとは異なり、ノドを開ききることはできませんが、中綴じよりも多くの紙を留めることができます。
本文を表紙で包むことによってステープラーを隠すことができますが、その際は接着剤を使用するため、本文と表紙で強度に差が出る点には注意が必要です。
アイレット綴じ
アイレット綴じは中綴じに含まれる綴じ方で、紙を綴じる際に使用する針金がCの形に変形したものを使用します。
小さな穴という意味を持つアイレットは、壁に差し込んだ押しピンに通すことで壁に掛けることができるため、カレンダーや店頭のメニューなどに使われる綴じ方です。
また、パンフレットなど、こまめにファイリングする必要がある資料をリングファイルの金属パーツにアイレットを通して保存することもできます。
アイレット綴じは穴を開けない綴じ方のため、ノドの余白を気にせずに印刷できる点が特徴です。
ステープラーを使わない綴じ方
こちらでは、ステープラーを使わない綴じ方をご紹介します。
無線綴じ
無線綴じは本文に使われる用紙をページの順に並べて、背になる部分に糊を付けて綴じる製本方法です。
数百ページなど、大量の紙を綴じることができる製本方法で、文庫本や辞書、カタログの制作に適しています。
また、無線綴じは背表紙ができる製本方法であり、タイトルや著者などの情報を記載しておくことで、本棚に保管しても確認しやすくなります。
無線綴じをより詳しく知りたい方は、下記のページをご参照ください。
参考ページ:無線綴じ冊子印刷とは?製本方法や用途についてご紹介
あじろ綴じ
あじろ綴じは折り工程の際、背となる部分に細かい切れ込みを入れ、そこに接着剤を塗布して強度を上げる製本方法です。
一般的な無線綴じよりも強度が上がる一方、ページの内側に切れ込みを入れて接着するため、ノドが開きにくくなる点には注意が必要です。
あじろ綴じは200ページ以上の本や、紙が分厚い本に適している綴じ方です。
PUR綴じ
PUR綴じはポリウレタンリアクティブ(PUR)という接着剤を使用して紙を留める製本方法です。
PURは薄く塗っても高い耐久性を持つため、一般的な中綴じ冊子よりも長持ちし、本が開きやすくなるといった特徴があります。
中綴じとは異なりノドを開ききることができるため、ノドの部分を気にせずページ全体に印刷することができる製本方法です。
糸かがり綴じ
糸かがり綴じは糸を使用する綴じ方で、1本の糸でページごとを波のように縫ったあと、糸で綴じた部分を平らにしてから糊で固める製本方法です。
本の強度が高く、大きく開いてもページが抜け落ちないといった特徴があるため、頻繁に使う教科書やページを大きく開く絵本などに使われます。
近年では接着剤の技術が向上したことにより、先述した無線綴じやあじろ綴じなどが使われる傾向にあります。
しかし、強度が高い綴じ方のため、ページ数が多かったり分厚い表紙を使用したりする本を製本する際などで、現在でも使われている製本方法です。
中綴じミシン
中綴じミシンは冊子の背の中心をミシンで縫う綴じ方で、ステープラーを使用する中綴じ製本と同様にノドを開ききることができます。
中綴じ製本との違いとしてはステープラーの有無で、読者にケガを負わせてしまう心配がある方は中綴じミシンによる製本方法を選ぶ傾向にあります。
また、中綴じミシンはステープラーを使用する中綴じよりも強度が高いという点も特徴です。
和綴じ
和綴じは中国発祥の綴じ方で、2つ折りにした本体に表紙を付けて、丈夫な糸で綴じます。
下記、和綴じで使われる糸の結び方です。
- 四つ目綴じ(よつめとじ)
本を綴じる際、本体や表紙に4つの穴を開け、その穴に縦横へ糸を通して製本する結び方です。
- 亀甲綴じ(きっこうとじ)
先述した四つ目綴じの部分に2つずつ、合計8つの穴を開け、その穴に紐を通してカメの甲羅のような形状で結ぶ方法です。
- 麻の葉綴じ(あさのはとじ)
四つ目綴じと同様に4つの穴を開け、麻の葉のようなデザインで糸を通す結び方です。
- 康煕綴じ(こうきとじ)
四つ穴綴じと同じ方法で製本しますが、めくれやすい角の部分を補強する結び方です。
コプト製本
歴史上、最も古い製本方法と言われているコプト製本は、表紙と本体に数箇所穴を開け、それらを紐で固定する製本方法です。
背表紙に出てくる糸が鎖状になっている製本方法で、この糸は「チェーンステッチ」と呼ばれます。
「コプト」とはエジプトにおけるキリスト教徒を指す単語で、コプト製本の技術は1~2世紀のエジプトで確立されたと言われています。
近年ではコプト印刷を用いた本はほとんど見受けられませんが、フォトブックや写真集、自作の冊子などこだわりを出したい本に使われることがあります。
リング綴じ
リング綴じはリング状の金属パーツを使用して綴じる方法で、表紙や本体に複数の穴を開け、そこにリングを通して製本します。
360度開くことができるといった特徴があるため、ページをめくりきって使うリングノートやカレンダーなどに用いられます。
クロス巻き
クロス巻きはステープラーで留めた表紙と本体をクロス(テープ)で包む綴じ方で、クロスの幅を調整することによりさまざまなページ数の冊子を製本することができます。
また、伝票など紙をはがして使うものについては、ステープラーを使用せずにクロスだけで止めます。
綴じ方に適した本の種類
下記、本記事で取り上げた綴じ方と本の種類をまとめた表です。
綴じ方 | 本の種類 |
中綴じ | 週刊誌、パンフレット、楽譜、会社案内 |
平綴じ | 企画書、配布資料 |
アイレット綴じ | カレンダー、パンフレット、店頭のメニュー |
無線綴じ | 文庫本、辞書、カタログ |
あじろ綴じ | 月刊誌、辞典、カタログ |
PUR綴じ | 写真集、パンフレット、地図、レシピ本 |
糸かがり綴じ | 教科書、絵本 |
中綴じミシン | アルバム、写真集、作品集、絵本、手帳 |
和綴じ | 俳句集、朱印帳、経本 |
コプト製本 | 自作の本 |
リング綴じ | リングノート、 カレンダー |
クロス巻き | 大学ノート、伝票 |
綴じ方が与える冊子の印象
綴じ方は、冊子の見た目や使い勝手、さらには受け手の印象に大きく影響を与えます。
たとえば「無線綴じ」は背表紙がしっかりと仕上がるため、重厚感があり、書籍や会社案内などに最適です。
「中綴じ」はページをフラットに開きやすく、パンフレットやイベント冊子のような手軽さが求められる用途に適しています。
また、「リング綴じ」や「糸かがり綴じ」は実用性や装飾性に優れ、デザイン要素としても注目されます。
このように綴じ方によって、冊子全体のトーンやブランドイメージが左右されるため、用途やターゲットに合わせて慎重に選ぶことが大切です。
たとえば高級感や丁寧さを演出したい場面では、糸かがりや和綴じのような伝統的な製本方法が有効です。
一方、コストやスピードを重視する場合は、ホチキスによる中綴じや平綴じが適しています。
冊子の印象は、内容だけでなく「どう綴じるか」によっても大きく変わることを意識しましょう。
冊子デザインと印刷の注意点
冊子の品質を左右するのは、コンテンツだけではありません。
読みやすさや印刷トラブルを防ぐためには、デザインや入稿データの精度が重要です。
以下では、レイアウトの工夫と印刷準備のチェックポイントを詳しく解説します。
レイアウトと視認性を高めるコツ
読みやすい冊子にするためには、視認性の高いレイアウトが欠かせません。
まず、フォントは用途に応じて選びましょう。
見出しには明確に目立つゴシック体、本文には可読性の高い明朝体などの使い分けが効果的です。
文字サイズは、本文では10~11ptを基準にすると読みやすくなります。
高齢者や子ども向けの場合は、もう少し大きめの文字サイズを検討してもよいでしょう。
また、適度な余白を設けることで、ページ全体がすっきりとした印象になります。
余白が狭すぎると窮屈な印象を与えるだけでなく、印刷時の断裁ずれにも影響します。
画像と文字の間にも十分なスペースを確保することで、情報が明確に伝わります。
さらに、視線の流れを意識したレイアウト(Z型構図や三分割法)を活用すれば、重要な情報が自然と目に入る構成になります。
情報の強弱をつけ、写真や図版を適所に配置することで、視覚的にもメリハリのある冊子に仕上がります。
印刷データの準備と入稿前チェック
完成したデザインを正しく印刷するためには、入稿前のデータチェックが不可欠です。
まず確認すべきは「塗り足し」の設定です。
仕上がりサイズの外側に3mm程度の塗り足しを設けることで、断裁時に白フチが出るのを防ぎます。
次に「カラーモード」は、RGBではなくCMYKに設定しましょう。
RGBで作成されたデータは、印刷時に色味が大きく変わる恐れがあります。
使用するソフトや保存形式によっては、自動変換時に想定外の色変化が起こるため、事前の確認が必要です。
「トンボ(トリムマーク)」の有無も重要な要素です。
印刷所によってはトンボなしのデータでは対応できない場合があるため、テンプレートを活用するか、規定サイズに従って設定してください。
また、フォントは「アウトライン化」もしくは「埋め込み」を行いましょう。
使用しているフォントが印刷所に存在しない場合、文字化けやレイアウト崩れの原因となります。
その他にも、画像解像度(300dpi以上)、リンク画像の埋め込み、データのバージョン確認など、細かなチェックを徹底することで、印刷ミスのリスクを大きく減らせます。
おわりに
本記事では、冊子の作り方について、制作前の設計ポイントから、用途に応じた綴じ方の選定、印刷・入稿時の注意点に至るまで幅広く解説しました。
綴じ方やサイズ、用紙選びなどの各工程を丁寧に検討することで、読みやすく魅力的な冊子を仕上げることができます。
内容だけでなく、製本方法や視認性といったデザイン面にも配慮することで、伝えたい情報がより効果的に届く冊子となるでしょう。


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